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あさか
(干物ナース)
食べて、寝て、ときどき旅。
わりと怠惰。
でもそれでいいと思ってます。
そんな日々の記録。

かわいい、じいちゃんだった。享年90。

湯呑みをかたわらに、新聞を読んだり、大相撲を観たり。
普段はあまり口を開かない人だった。
何を喋ったらいいのかわからない、そんな人。

だけど、お酒を呑むと、ほっぺを赤くして表情が豊かになる。
笑ったり、イタズラな顔をしていたり、拗ねてみたり。

それが、私のじいちゃん。


そんなじいちゃんが、
今日、静かに見送られた。

ばあちゃんが先に行った、あの世界へ。



3月の終わりに、母から連絡があった。

「じいちゃんですが、
口にする量が減って、眠っている時間が増えてます。
食堂へは歩いて、トイレは自分で行ってますが。
直ぐにどうにかなりそうではないと思うけど。

命が、ゆるやかに下りていくのを見守っています。」

祖父は数年前より認知症を患っており、
1人での生活が難しく、
施設での暮らしをしていた。

タイミングよく、
私は地元方面でキャンプをする予定だったので、
帰り道にじいちゃんのところへ寄ろう。
そう思って、返事した。

だけど、キャンプが楽しくなって、知らせていた予定を変更し、
次の日に行くことにした。

その日、私は3時頃に目が覚めてしまい、
それからどうしても眠れなくなった。
眠れないから漫画でも読もう。

そうして気づいたら朝の8時。
母から着信があった。

「どうせ、今日いつ来るの?っていう確認だろうなぁー。
めんどくさいなー。」
なんて思いながら、無視してた。

そしたらLINEでメッセージが届いた。

「おはようございます。
じいちゃんが3時位に亡くなりました。」


予定通りに行っていればよかった…
というほんの少しの後悔。

そして、
3時から眠れなかったのは、それでか…と妙に納得した自分がいた。

虫の知らせというには、あまりに静かで。

もしかすると、
祖父は、あの時間に、
そっと私のところへ来ていたのかもしれない。

感傷に浸りながらも、
現実では、これからどうしたらいいかと頭を切り替える。

私は弟と足並みを揃えて、
その日の夕方に祖父に会いに行くことにした。

葬儀場の案内をたどった先にあったのは、
まだ何も飾られていない広間にひっそりと佇む真っ白な棺。

なんてことないように、棺の中を覗きこむと、
穏やかな表情で目をつぶっているじいちゃんの姿があった。

「あらーじいちゃん、
かわいい顔してるねぇー
いい顔。」

その横で、
母の旦那さんが教えてくれた。

『トイレに行く道の途中で
倒れて死んでたんだって』

「え。
すごいね。
最後まで自分のことやって死ねるなんて。」

そう。
じいちゃんは、
いつもの。
毎日の。
日々の。
延長線の上で死んでいった。

それって、
私にとっては、
最高の死に方だと思う。

食べなくなって、
飲めなくなって、
体力も落ちていっただろうに、
それでも下の世話はされたくない。
そんなじいちゃんの
頑固な意地を感じて、思わず笑ってしまった。

「自分のじいちゃんだから、
素敵な死に方だって思えるけどさ、
働いてる立場だったら、
イヤな死に方だなぁー(笑)」

転倒したから死んだのかもしれないし、
死んだから転倒したのかもしれない。

物事はなんだって、
見え方ひとつで、変わる。

じいちゃんから、
最期にそんなことを教えてもらった気がしている。

色々な事情があり、
最終的に私と弟は葬儀には出席しないことにした。
この日の対面が、じいちゃんの顔を見ることができる最後になった。

そうして、
次の日からは私の日常へ戻ってきた。

いつもと変わらない時間の中、
ふとした瞬間に、
じいちゃんのことを思い出す。

あんなこともあったな。
こんなこともあったなって。
それで、
ひとつ、気づいたことがあった。

私の人生の軸とも言える、
旅のはじまり。
新潟県高校生国際協力視察の旅。

行きたい!とお願いしたとき、
母は無理だ、ダメだと言っていた。
けど、母が祖父母に話して、

「いいじゃないか。
あさかに、お金を貸すよ。」

って言ってくれた。
おかげで、私は初めての海外の空に刺激を受けることができた。

バイトをして貯めたお金を返しにいったら、

「よくやったね。
これは、そのままあさかにあげる。
好きに使いなさい。」

嬉しそうに、
私にそのお金を手渡してくれた。

そして、それは数年後、
世界一周のときに使った。

そんなふうに、
私が何か新しい挑戦をしようとするとき、
そっと背中を押して、見守ってくれていたのは、じいちゃんだった。

上京するときも、
旅に出るときも、
ほんの少し、寂しそうな顔をして、
「頑張れ!」って。

かわいい、じいちゃんだった。

仕事終わり、
イヤホンから流れてきた歌の続きを聴いた。

朝は気づかなかったのに、
そのときだけ、言葉がすっと入ってきて。
思わず、泣きそうになった。

ー命の果てに祝福を また会えるから、泣かないでー

そんなふうに、
言われた気がして、

少しだけ、肩の力が抜けた。


また会おうね。

ありがとう。

2026.4.8

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